耳と声

子どもの音程が合わないときの接し方|直さずに耳と声を育てる遊び

 文:GOLDEN AGE PROGRAM 編集部/監修:たーなー先生(田中直人)

音程が合わない歌声は、耳と声がつながっていく途中の姿です。直すより先にできる関わり方と遊びを紹介します。

子どもの音程が合わないときは、まず「直さない」ことが一番の接し方です。子どもは歌いながら、耳で聞いた音と自分の声を少しずつ近づけていきます。その途中で指摘を重ねるより、歌うこと自体を楽しい時間にしておく方が、声も耳も自然に育っていきます。この記事では、音程が合わないときの受け止め方、耳と声をつなぐ家庭の遊び、声かけの言い換えを紹介します。

音程が合わないのは、成長の途中の姿

幼い子どもが歌うと、メロディの高低が実際の曲と違って聞こえることがよくあります。聞こえている音を、そのまま自分の声で再現するには、声の高さを細かく調整する経験が必要で、歌いながら少しずつ慣れていくものです。

走り始めた子どもが、まっすぐ走れないのと同じように、歌い始めた子どもの声も、ゆれながら進みます。歌う時間を楽しむ中で、声と耳は少しずつ近づいていきます。今は合っていなくても、楽しく歌っている時間そのものが、次の成長の土台になります。

やってしまいがちな、三つの関わり方

よかれと思ってかける言葉が、子どもの歌う気持ちを小さくしてしまうことがあります。

つい言ってしまう言葉子どもが受け取りやすい気持ち
「そこ、音が違うよ」間違えたと思って、声が小さくなる
「もう一回、ちゃんと歌って」歌うのが「テスト」になってしまう
「お兄ちゃんはうまかったのに」比べられて、歌うことを避けたくなる

歌は、うまいか下手かを判断される場面が多いと、人前で歌いたくない気持ちにつながります。音程を整える前に、「歌うのが好き」という気持ちを守ることが、長い目で見て最も大切です。

歌う場面ごとに、気にしなくてよいこと

場面気にするより、楽しみたいこと
お風呂やお料理中の鼻歌自由に出ている声。気持ちよさそうな表情
園や学校の歌みんなで歌う楽しさ。口を大きく開けているか
お誕生日の歌みんなの顔を見て歌う喜び
発表の前緊張しながらも、舞台に立とうとする気持ち

どの場面でも、音程の正確さより、歌う気持ちが前に向いているかを見てあげましょう。歌う気持ちが前向きなら、耳も声も、楽しむ中で育っていきます。

耳と声をつなぐ、家庭の遊び四つ

遊び一:声のすべり台

「ひゅーっ」と、高い声から低い声まで、すべり台をすべるように声を出します。子どもは、声が上下に動く感覚を、体で味わえます。絵を描いて、すべり台の上で高い声、下で低い声と決めると、さらに分かりやすくなります。

遊び二:まねっこ呼びかけ

大人が「おーい」と呼びかけると、子どもが同じ高さで「おーい」と返す遊びです。山びこごっこのように遊ぶと、相手の声の高さを聞いて、まねする経験ができます。うまく合わなくても、そのまま笑って次へ進みます。

遊び三:高い・低いのお人形

鳥のお人形は高い声、くまのお人形は低い声で話す、というルールで会話します。鳥の声が出たらにっこり、くまの声が出たらどしんと座る。声の高さと、体の動きを結びつけるのが狙いです。

遊び四:ささやき歌

小さな声で歌うと、自分の声がよく聞こえます。耳元でささやくように、同じ歌を二人で歌ってみましょう。大きな声を出すより、自分の声を聞く余裕が生まれ、聞くことと声を出すことを結びつけやすくなります。

大人が一緒に歌うときの、三つのコツ

  1. 子どもより少し控えめな音量で、正しいメロディをそっと歌う。
  2. 子どもの声に合わせず、ぶれない声で歌い続ける。
  3. 歌い終わったら、音程ではなく、歌っていた様子をほめる。

大人が合わせようとして、子どもと同じように音程をずらすと、子どもは正しいメロディを聞く機会を失います。一方で、大声で上から正しく歌うと、子どもは萎縮してしまいます。「そっと隣にいる声」が、ちょうどよい距離感です。

五分でできる、耳と声のミニメニュー

毎日の短い時間に、次の流れを取り入れてみましょう。

  1. 声のすべり台を二回。高い声から低い声へ、体も一緒にしゃがんでいく。
  2. まねっこ呼びかけを三回。大人の「おーい」に、子どもが返す。
  3. 好きな歌を一曲、大人と一緒にそっと歌う。
  4. 歌い終わったら、楽しかった場面を一つ話す。

順番は変わっても構いません。長くやるより、毎日同じ流れで気軽に続ける方が、歌う時間が楽しい習慣になります。

録音を、聞き比べではなく「思い出」として残す

子どもの歌声を録音するときは、直すための材料ではなく、成長の記録として残す気持ちで行います。数か月後に聞き返すと、声の変化や、そのときの笑い声まで聞こえて、家族の宝物になります。子どもに聞かせるときも、「上手になったね」ではなく、「この声、かわいいね」と、声そのものを楽しんでください。

楽器を使った、音の高さの見つけ方

家にピアノや鍵盤おもちゃがあれば、一つの音を鳴らして、同じ高さで「あー」と声を出す遊びができます。うまく重ならなくても大丈夫です。音が鳴っている間、のばして声を出し続けると、自分の声と楽器の音の違いに耳が向きます。鍵盤がなければ、グラスをスプーンでたたく音や、お鍋のふたの音でも、音の高さを感じる遊びになります。子どもが「いまの、同じだった?」と自分から聞いてきたら、耳を向けはじめたサインです。

そのときは、「同じに聞こえたよ」「ちょっと高かったかな」と、楽しい雰囲気のまま、短く答えてあげてください。子ども自身が気づく経験を、何より大切にします。

声かけの言い換え例

場面おすすめの声かけ
歌い終わったあと「いい声だったね。もう一回聞かせて」
元気に歌っているとき「楽しそうに歌っているね」
自信がなさそうなとき「お母さんも一緒に歌うよ」
新しい歌に挑戦するとき「どんな歌か、一緒に聞いてみよう」

ほめるときは、結果ではなく、様子や気持ちに注目すると、子どもに伝わりやすくなります。「上手」「下手」という言葉を使わない習慣を、家庭の中で作ってみましょう。

聞く時間を増やすことも、声を育てる

声を出す前に、聞く時間をたっぷり持つことも大切です。好きな曲を何度も聞くと、そのメロディが耳に残り、歌いたい気持ちが自然にわいてきます。いろいろな楽器の音や、高い音、低い音、ゆっくりな曲、はやい曲を聞き比べる遊びも、耳を育てる時間になります。

家庭で聞く音楽は、子どもの好きな曲を中心に、日によって違うジャンルを混ぜてみましょう。聞いたあとに「どの音が一番好きだった?」と聞くと、子どもは音の違いに注目するようになります。

声と耳を、遊びの中で育てる場へ

GOLDEN AGE PROGRAMは、幼児から小学生のための、声・音楽・英語で話す力のプログラムです。声と歌、耳とリズムを、遊びの中で一歩ずつ進めます。耳と声を結びつける遊びは、音の高さやリズムを遊びの中で聞き分ける経験として、プログラムの大切な柱の一つです。講師はVOICE TRAINER ACADEMYで学んだ認定講師で、声の指導はたーなー先生のメソッドが基になっています。

ご家庭ではオンラインで全国から受講できます。回数や料金は、年齢とご希望をうかがってからご案内します。歌のことで気になることがあれば、お気軽にお話しください。GOLDEN AGE PROGRAMについて聞いてみる

よくある質問

音程を直すために、どんな練習をさせればよいですか。

練習として直すより、声のすべり台やまねっこ呼びかけなどの遊びで、耳と声をつなぐ経験を増やす関わりがおすすめです。

大人が一緒に歌ってもよいですか。

はい。子どもより少し控えめな音量で、ぶれずにそっと歌うと、正しいメロディを聞く機会になります。

人前で歌うのをいやがるようになりました。

比べる言葉や評価する言葉をやめて、歌っている様子や楽しそうな姿をほめることから始めてみてください。